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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)2265号 判決 1970年6月24日

控訴人 中川千鶴子

被控訴人 株式会社日本マーケテイングコンサルタント 外一名

主文

本件控訴を棄却する。

但し、原判決主文第二項に「金一〇四、〇一〇円」とあるのを「金一〇二、〇五一円」と更正する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人らは各自控訴人に対し(一)金一二万円およびこれに対する昭和三九年一〇月三一日から右完済に至るまで百円につき一日一〇銭の割合による金員から金一〇万四、〇一〇円およびこれに対する同年一一月七日から右完済に至るまで年一割八分の割合による金員を控除した金員、(二)金三万一、三七〇円およびこれに対する昭和四一年五月一四日から、金四、〇九二円およびこれに対する昭和四三年四月一日から、金三万五、八八八円およびこれに対する控訴人勝訴判決確定の翌日から、右各完済に至るまで年五分の割合による金員、(三)金八、九〇〇円(控訴審着手金)およびこれに対する昭和四五年五月二二日(控訴状送達の翌日)から右完済に至るまで年五分の割合による金員、(六)右(一)、(二)の遅延損害金と(三)の金員との一〇分の二の金員(謝金)の各支払をせよ。訴訟費用は第一、二審ともに被控訴人らの負担とする」との判決および仮執行の宣言を求めた。被控訴会社代表者兼被控訴人中村真策は、適式の公示送達による呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しない。

当事者双方の事実上の主張、証拠<省略>……ほかは、原判決事実摘示のうち被控訴人らに関する部分と同一であるから、これを引用する。

理由

本件に関する当裁判所の判断は、次に附加するほかは、原判決のそれと同一であるから、これを引用する(但し、原判決理由一、五、六の1、3を除き、六の2の末尾から六行目に「一、五六二円」とあるのを「一、六四一円」と、五行目に「二、〇三八円」とあるのを「一、九五九円」と、四行目に「一〇二、九七二円」とあるのを「一〇二、〇五一円」と、六の3三行目から四行目にかけて「一〇四、〇一〇円」とあるのを「一〇二、〇五一円」とそれぞれ更正する)。

利息制限法が債務者保護のための法律であり、同法第二条に第一条第二項のような除外規定が設けられていないことから考えると、同法第二条は債務者の任意の申出により利息の天引がされた場合にも適用されるものと解するのが相当である。また、金銭債務の遅滞による損害賠償の額は、法律に別段の規定がある場合を除き、約定または法定の利率によるべく、債権者がそれ以上の損害を被つたことを挙証しても、その賠償を求め得ないものと解すべきことは、金銭債務に関する特則である民法第四一九条が第二項において第一項の損害賠償については債権者は損害の証明をすることを要しないと規定しながら、債権者が約定または法定利率以上の損害を被つたことを挙証した場合を除外していないことから考えて、明白といわざるを得ないし、民法第四八五条所定の弁済費用は債務を履行するために要する費用、たとえば、運送費、荷造費、登録税等を意味するものと解されるから、控訴人主張のような債権取立のための費用等は右弁済費用には含まれないものと解せざるを得ない。

よつて、被控訴人らは各自控訴人に対し本件手形金債務元本残額一〇万二、〇五一円およびこれに対する支払期日の翌日である昭和三九年一一月七日から右弁済に至るまで約定利率を利息制限法所定の制限範囲内の利率に引直した年一割八分の割合による損害金を支払うべき債務を負担しているものというべく、控訴人の請求は右の限度で理由があるから、これを認容すべきであるが、その余は失当であるから、これを棄却すべきであり、これと同趣旨に出た原判決は相当である(但し、利息の計算の一部に違算があり、元本残額の記載に誤記があるので、前記のように更正する)。

よつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条に従い主文のように判決する。

(裁判官 近藤完爾 田嶋重徳 吉江清景)

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